研究概要 |
1) 酵母ミトコンドリア型態制御遺伝子mmm1,mdm10の哺乳動物細胞への導入:酵母胞でミトコンドリア(ミト)形態を制御し、その欠損によりミト巨大化が報告されているmmm1,mdm10のプライマーを用いRT-PCR法で増幅し、HAプローブを組み込ませて発現ベクターを作成し、Lipofection法によりRL-34,MDCK両細胞に導入した。現在、細胞内局在を同定中。Perman cell lineが確立できたら、これを用いてミト巨大化条件下でミト形態変化を検討する。 2) 培養栽培系でのミト巨大化実験モデルの確立と、ミト巨大化へのフリーラジカルの普遍的関与の証明:初代培養肝細胞系でのミト巨大化モデルの確立につづき、RL-34,IAR-20,Cos1細胞でミト巨大化を確立すると共に、H_2O_2でもミト巨大化する事を見出しフリーラジカルの関与を一層実なものとした。 3) ミトコンドリア(ミト)巨大化によるapoptosis(AP)誘導機序の解明:培養細胞系を用い、free radicals(FR)存在下で形成された巨大ミトが、引き続きFRに曝されると、巨大ミト膜のメガチャネルが開放され、その結果巨大ミトは膨化、膜電位低下、チトクロムcのミトからの流出、細胞内ATP量低下をもたらし、巨大ミト存在下の培養細胞はAPに陥る事を明らかにした。又、膨化巨大ミトの酸素消費量の著名低下がFR産生能低下の原因である事をつきとめた。膨化巨大ミトのFR産生能低下が顕著で、細胞内FR量減少をもたらす場合には巨大ミトは構造・機能共に正常に戻るが、効果がなければAPに陥る事になる。即ち、これまで不明であったミト巨大化現象の細胞病理学的意義が明らかになると共に、APの発生・進展にミトの"膨化"が注目されているが、新たに"巨大化"が加わることになり、AP研究に大きく貢献するものと思われる。 4) 培養細胞系を用いたミト巨大化のCoQ_<10>による阻止:培養ラット肝細胞を用い、cycloheximide,CoQ_<10>によりヒドラジン、クロラムフェニコールによるミト巨大化阻止に成功した。同時に、ミト膜電位、細胞内フリーラジカル量増加も抑制された。さらに、クロラムフェニコールによるマウス肝巨大ミトの回復過程が、CoQ_<10>、cycloheximideにより著明に促進されることを突き止めた。 5) 新規合成TEMPO誘導体Apoptosis(AP)の阻止:様々な病的環境下でのミトコンドリア(ミト)の巨大化に続くAPが、4-OH-TEMPOにより阻止される事を既に報告したが、in vivoで体重減少・神経毒などの副作用を示すので、ポーランド・グダニスク医大との共同研究により新規合成した6種のTEMPO誘導体を用い、培養細胞でのミト巨大化AP阻止を目安として検討。4-OH-TEMPOが2-4mMで有効なのに対し、4-octanoyl-,4-lauroyl-TEMPO 50-100μMの低濃度でH_2O_2,t-butylhydropeeroxideによる細胞障害をより有効に阻止する事を見出した。 6) Leflunomide(LF)の新しい作用:LFは、ミト内膜に存在するdehydroorotate dehydrogenase(DHODH)の阻害剤であり、最近リウマチの治療剤として用いられている。DHODHはdehydroorotateをorotateに変えるがこれと共役してO_2が産生される。培養細胞系を用いてLF投与時のミト酵素ラジカル産生への影響を検討する過程で、LFがミト新生を促進することをつきとめた。引き続きその機序を検討中。
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