ヘムオキシゲナーゼ(HO)はヘムの分解に働く酵素と考えられていたが、近年体内の酸化ストレス応答に重要な役割をはたしていることが明らかにされつつある。本研究は誘導型HOであるHO-1の呼吸器系における役割を明らかにすることを目的とした。基礎的検討では、HO-1が主に気道上皮細胞、血管内皮細胞、肺胞マクロファージに発現することが示された。気道上皮細胞では過酸化水素による障害から細胞を保護する働きがあり、その機序としてヘム分解により生成されるビリルビンの抗酸化作用によることが明らかとなった。血管内皮細胞では、アレルギー性気道炎症による血管透過性の亢進を抑制し、また、肺胞マクロファージのオキシダント生成を抑制する働きがあることが示された。臨床的検討では、ヘム分解により生成される一酸化炭素(CO)が喘息気道炎症や感冒罹患時の呼気中に増加しており、酸化ストレスがこれらの病態に関与することが示唆された。また、呼気CO濃度は喘息気道炎症のマーカーとして利用でき、喘息気道炎症に対する治療効果判定に有用と考えられた。更に、HO-1遺伝子プロモーター領域のGT繰り返し配列の長さに遺伝子多型があり、長いGT繰り返し配列を有する人は喫煙による肺気腫発症の危険性が高いことが明らかにされた。HO-1遺伝子多型を調べることにより禁煙指導に有用な情報を提供し得ると考えられる。
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