研究概要 |
初年度は、モルモット喘息モデルを作成し、遅発型アレルギー反応時に気道でiNOS、ザンチンオキシデースの過剰発現によるNO及びスーパーオキサイドの過産生、さらに両者の反応によって形成されるパーオキシナイトライトの生成増加が起こっていることを示した。さらに、iNOS,ザンチンオキシデースの阻害剤やパーオキシナイトライトの消去剤が気道血管透過性亢進を抑制することを証明した。 次年度は喘息や慢性閉塞性肺疾患患者(COPD)に対するパーオキシナイトライトの関与を検討した。呼気NO濃度は健常人、慢性気管支炎に比べ喘息で有意に高い値であり、誘発痰中のiNOS陽性細胞数と正の相関を示した。喘息、COPDの誘発痰の細胞成分のニトロチロシン染色より推定したパーオキシナイトライト産生は、iNOS陽性細胞数と正の相関を示し、その生成にiNOS由来のNOの関与が示唆された。さらにパーオキシナイトライト陽性細胞数、百分率とも健常人に比べ、喘息、COPDで亢進しており、両疾患間の比較では、COPDで有意に高かった。気道の閉塞性障害の指標である一秒量と誘発痰中ニトロチロシン陽性細胞数はCOPDで負の相関を認めた。 以上の検討より、喘息、COPDでパーオキシナイトライトの産生増加が起こっていることが示され、喘息、COPDの発症・増悪因子とし重要と考えられた。実際今回の結果でCOPD患者の閉塞性障害の程度とパーオキシナイトライトの産生量が正の相関を示したことからも、上記の仮説は指示される。また、これまで呼気NO濃度が喘息で高値を示すのに比べ、COPDで健常人と同程度である理由については不明であったが、今回の結果から、COPD気道では喘息に比べスーパーオキサイドとNOの速やかな反応が起こりパーオキシナイトライトが生成されるためと推定された。 パーオキシナイトライトの産生抑制・消去が将来のCOPD、喘息治療に有望と考えられた。
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