研究概要 |
手術肺および死後4時間以内の剖検肺から得られた気道を用いて、気道上皮細胞および気管支腺(粘膜下腺細胞)を単離し、また各々の培養細胞を作製した。これらの細胞とHuman pulmonary mucoepidermoid carcinoma cell line(NCI-292)を用いて、次のような所見を得た。すなわち、1)リゾチーム、Secretory leukocyte protease inhibitor(SLPI)のいずれもCFTR発現、クロライドチャネルとしての機能に明瞭な影響を及ぼさなかった。2)リゾチーム、SLPI、サーファクタントプロティンA(SP-A)、デフェンシン(hBD)の遺伝子発現あるいは分泌に於いて、呼吸器疾患を有しない例、慢性気管支炎例および気管支喘息例間で明瞭な差異は認められなかった。3)ステロイドであるデキサメサゾン処理でSLPIの分泌および遺伝子発現、ムチンのMUC1,MUC2,MUC4,MUC5ACの遺伝子発現のいずれも有意に抑制した。14員環系マクロライドであるエリスロマイシン処理ではSLPIの分泌および遺伝子発現が抑制されず、むしろ増強させられる傾向を示した。また、エリスロマイシンは免疫機構に働くとされているMUC1の遺伝子発現を増強させたが、分泌顆粒のムチンであるMUC4,MUC5ACの遺伝子発現のいずれも有意に抑制した。以上の所見は主に気管支腺、NCI-292で明瞭にみられたが、気道上皮細胞ではそれらの分泌量および遺伝子発現が少なく明瞭でなかった。
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