研究概要 |
多発性硬化症(MS)の病態解明と治療への応用を目指して,MSにおけるケモカインシグナル研究に着手した.(1)血液,髄液中ケモカイン濃度の測定;MS患者,対照群の血液を使川して,ELISAにより血液及び髄液中ケモカイン濃度の測定をすすめている.とくにIL-8とエオタキシンに注目し解析を開始した.研究臨力者とともに新種のケモカインに対するモノクローナル抗体を準備中であるので,測定可能なケモカイン種は平成11年度には更に増える.(2)白血球におけるケモカインとその受容体の発現レベルの解析;リンパ球各サブタイプでのケモカイン(30種),ケモカイン受容体(10種)の発現パターンの観察のための定量的RT-PCR実験条件設定を完了した.まず患者及び対照群のCD4およびCD8 T細胞それぞれにおけるケモカインシグナル伝達系の解析中である.(3)多発性硬化症患者血液中の血管内皮細胞障害(活性化)マーカーの検討;血管内皮細胞の障害がMS再発に重要であることから,免疫反応により変化しうる血管内皮マーカー分子を検討した. その結果plasminogen activator inhibitor-l(PAI-1)の血中濃度がMS再発時に極めて短期間増加する事を見いだした(投稿中). 一方Lp(a),TGF-β等には変化が無かった.PAT-1レベルの超急性期での変化の発見が今年度の収穫である.PAI-1レベルは種々のサイト力イン・ケモカインにより変化するので,今後PAI-1レベル変動に関連するケモカインに注目して解析を進める. 平成11年度は,今年度の成果を発展させるべく,上記項目に加えてリンパ球活性化に対するケモカインの効果を患者の培養白血球を使用して検討する.またMS剖検脳を用い,in situhybridization法,定量的RT-PCR,免疫組織化学により検討する.
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