研究概要 |
紀伊半島に多発する筋萎縮性側索硬化症(ALS)とパーキンソン痴呆複合(PDC)の特徴は,家族性発症率が高く(70%以上),中枢神経系にアルツハイマー神経原線維変化(NFT)が多発することである.我々は,ALS/PDCの12症例でタウ遺伝子解析を、剖検2例でタウ蛋白解析を行った. タウ遺伝子解析では,ALS/PDC12症例の血液白血球からゲノムDNAを抽出し,タウ遺伝子のすべてのエキソンをsingle strand conformation polymorphism (SSCP)解析でスクリーニングした.frontotemporal dementia and parkinsonism linked chromosome 17 (FTDP-17)で遺伝子変異が明かにされているエキソン9〜13については直接塩基配列決定法を行った.SSCP,直接塩基配列決定法ともに変異は認められなかった. タウ蛋白解析では,ALS/PDCの2症例の剖検凍結脳から分離精製したNFTのPHF タウをタウ抗体でimmunoblotした.脱リン酸化後のALS/PDCの異常タウは6種類すべてのisoformから構成されており,アルツハイマー病と同一パターンで,特定のisoformの異常増加や欠損は認められなかった. 以上の所見から,紀伊半島のALS/PDCは,家族性tauopathyではあってもタウ遺伝子自体に一次的原因がある可能性は低いと考えた.
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