研究概要 |
1. 多発性硬化症(multiple sclerosis.MS)患者末梢血からのT細胞株の樹立 myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG),myelin basic protein(MBP),proteolipid protein(PLP)等の脳炎惹起能を有する髄鞘蛋白抗原の全長をカバーする64種のover lapping peptideを人工合成し、刺激抗原とした。アジア型MS11例、西洋型MS8例、健常対照6例の末梢血よりリンパ球を精製し、上記抗原刺激に反応してくるT細胞株を多数樹立した。MOG反応性T細胞株は、アジア型MS11例中6例(55%)、西洋型MS8例中2例(25%)、健常対照6例中1例(17%)で樹立された。PLP反応性T細胞株は、アジア型11例中3例(27%)、西洋型は8例中2例(25%)、健常対照は6例中2例(33%)で樹立された。MBP反応性T細胞株は、アジア型MS11例中3例(27%)、西洋型8例中3例(38%)、健常対照6例中0例(0%)で樹立された。アジア型MSで樹立頻度の高かったMOG反応性T細胞株について、T細胞エビトープを検索した。反応性エビトープは10-30,33-48,95-115,112-132,140-160,167-186,184-204,193-213と分散していた。拘束性分子は、検索した範囲内ではHLA-DR分子が多かった。 2. アジア型MSのHLA-DPB遺伝 アジア型の中でも視神経脊髄型の数を増やして(n=46)、さらにDPBlアリルの頻度を検討した。DPBl^*0501は健常対照60.7%に対し視神経脊髄型は93.5%(p<0.0001),DPBl^*0301は健常対照8.6%に対し、視神経脊髄型は0%だった(P=0.0396)。 以上、アジア型MSではHLA-DPBl^*0501アリルが疾患感受性遺伝子、HLA-DPBl^*0301アリルが疾患抵抗性遺伝子となっていることが明らかとなった。この研究によりアジア型MSでは、MOG反応性T細胞株の樹立頻度が高いことが示されたので、今後さらに細胞クローンのレベルでMOGとそれ以外のベプチドに対する反応性を調べていく予定である。
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