研究概要 |
平成11年度はAPP(amyloid precursor protein)遺伝子とtau遺伝子のプロモーター領域におけるメチルシトシンの分布とその加齢変化を剖検脳組織を用いて検討した。APP,tau蛋白はともにアルツハイマー型老年期痴呆における神経変性に関与することが知られている。 APP遺伝子については開始コドンの上流-226〜-100の解析を行った。この部位には約40か所のシトシンがあり,このうち高頻度にメチル基を有することで知られるCpG配列が18か所に及ぶ。しかし各症例のメチルシトシンはわずか6〜0か所(CpG配列中5〜0か所)であった。メチルシトシンが存在した延べ13か所において,70歳を越える症例のメチルシトシンの頻度は70歳以下の症例に比し有意(p<0.05)に少なかった。APP遺伝子プロモーター領域(-226〜-100)におけるメチルシトシンの頻度は少なく,加齢に伴いさらに減少する。 またtau遺伝子についてはAndreadisら(1996)の報告を参考にプロモーター領域(97-378)からexon-1の一部(379-436)までを検討した。128か所のシトシンのうち各症例のメチルシトシンは4〜22か所(のべ51か所)あり,その数は加齢に伴い減少した(p<0.01)。既知のコンセンサス配列に関する部位別検討ではGCF配列(218,220,229,232,247,333)中のメチルシトシンが加齢に伴い減少し(p<0.05),SP-1配列(336-345)とSP-1様配列(401-410)中のメチルシトシンは加齢に伴い増加した(p<0.05)。AP-2配列(計6か所)にはメチルシトシンは認められなかった。tau遺伝子の転写活性は加齢に伴い低下する可能性がある。
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