研究概要 |
ニューログリカンC(NGC)は、私達が発達期のラット脳において発見した膜貫通型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンである。本研究では、脳の神経回路形成におけるNGCの役割を、主に遺伝子工学的手法により明らかにすることを目指してきた。これまでに解明した主な点を以下にまとめる。 1.ヒトNGC遺伝子は、6つのエクソンからなる約19kbの大きさであり、CSPG5として国際登録した。染色体座は、FISH法により3p21.3であることがわかった。 2.マウスNGC遺伝子の大きさは約17kbであり、染色体座は9F1であった。 3.NGCには、スプライシングによる3種類の変異体(NGC-I,-II,および-III)があることがわかった。主要変異体であるNGC-IとNGC-IIでは、第1エクソンによりコードされているN-末端のアミノ酸配列が異なること、またNGC-IIIは、NGC-Iの細胞内領域に、第5エクソンによりコードされる27アミノ酸からなるペプチドが押込されていることが明らかとなった。 4.NGCの細胞外ドメインにあるセリン残基が、リン酸化されることがわかった。 5.Site-directed mutagenesisにより、NGCは、マウスの配列で123番目のセリン残基にのみコンドロイチン硫酸が導入されていることが示された。 6.第2エクソンを欠失するように設計したターゲッティングベクターをCre-loxPシステムにより作製し、相同組換えを起こしたES細胞を5クローン得た。そのうち1クローン由来のキノラマウスの交配により、ヘテロ接合体が得られた。ヘテロ接合体同志の交配により得られたホモ接合体を、Cre-トランスジェニックマウスと交配し、NGC遺伝子についてヘテロ接合体を得た。現在、NGC遺伝子の完全欠損マウスの誕生を待っているところである。
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