研究概要 |
発病前の早期段階での無症候性動脈硬化の診断や個々の経時的変化の計測が、循環器疾患の予防や早期治療に不可欠となっている。しかしこれら血管の早期病変を外来レベルで非観血的に高精度に計測する方法は報告されていない。 研究成果を列挙すると、 1)従来の計測法の信頼性を向上させ、受信信号のS/Nが低い症例においても安定して計測しうるように。最小二乗法にのっとった新しい手法を開発した。 2)検診などでの大量データの処理時間を短縮するように発展せしめ、病変の物理的な特性(弾性的特性)がリアルタイムに計測しうる様にし得た。 3)東北電力社員の多数例を対象に、冠動脈病変と比較的相関の高いとされている頚動脈の局所壁硬化病変を高精度に計測し動脈硬化危険因子との定量的関係を検討した。この総勢250名の検討からは、従来の定説では動脈壁の厚み増大が動脈硬化病変の最初の所見であるとされていたのに対し(NEJM,1991)、それ以前に既に壁弾性が増大しており、それは高脂血症、高血圧、喫煙などの危険因子、さらに多因子的に統合したリスクインデックスと強<相関していること明らかにした. 4)1998年,1999年と経年的に計測し得た約100名については生活習慣への取り組みによって壁の厚みは有為に変化しな<てもその壁弾性は鋭敏に変化していた。すなわち日常の生活習慣の指導とそれに伴う是正によって壁の弾性値の著明な改善が見られることを明らかにした。 5)経食道ドプラによる冠動脈近位部におけるアテローム病変の内部組成を1998,1999の両年にわたって計測し、治療法と粥腫の退縮、安定化との関係に関する検討を行った。 本研究により確立された非観血的診断法は、我が国での緊急問題とされる生活習慣病に対する新しいミクロンレベルの診断法たりうるといえよう。
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