研究課題/領域番号 |
10470162
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
磯部 光章 信州大学, 医学部第1内科, 助教授 (80176263)
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研究分担者 |
天野 純 信州大学, 医学部第2外科, 教授 (20138283)
川崎 誠治 信州大学, 医学部第1外科, 教授 (80177667)
矢崎 善一 信州大学, 医学部第1内科, 助手 (50283263)
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キーワード | 腹部大動脈癌 / ミオシン重鎖 / 細胞外器質分解酵素 / ゲラチナーゼ / in situ RT-PCR / TUNEL法 / アポトーシス / 形質変換 |
研究概要 |
我々は現在までに、腹部大動脈瘤の手術標本を凍結保存し、手術所見や臨床経過(切迫破裂の有無,拡大速度)等で分類し、これらの手術標本を間接抗体法による免疫染色により非筋型および平滑筋ミオシン重鎖、細胞外器質分解酵素の発現を確認した。その結果、急速拡大および切迫破裂例の血管においては、未分化な細胞形質を示す非筋型ミオシン重鎖SMembの発現が血管中膜の紡錘形の細胞に増強しているのに対し、正常血管内の平滑筋細胞で持続的に発現して分化した細胞形質を示すSM2の発現が抑制されていた。また、細胞外基質分解酵素のうちゲラチナーゼに分類されるMMP-2とMMP-9の発現も急速拡大および切迫破裂例の血管の中膜において著しく増強しているのに対し、それらの抑制酵素であるTIMP-1およびTIMP-2の発現は抑制されていた。これらの発現変化は緩除な経過をたどった血管では明らかではなかった。in situ RT-PCR法による組織内転写発現の検討でも、上記の免疫染色と同様の結果がそれぞれの血管群で確認された。さらに、TUNEL法を用いて血管壁内の細胞死(アポトーシス)を検討すると、急速拡大および切迫破裂例の壁内にTUNEL陽性細胞が多く観察され、血管を構成する細胞の死と臨床病態の関連が示唆された。以上の結果から、血管壁内で観察される細胞の形質変換、細胞外基質分解酵素の発現変化、及びアポトーシスは血管のリモデリングという点から腹部大動脈瘤の臨床像と深く関与していることが示唆された。
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