研究概要 |
1.冠動脈硬化と糖尿病:急性冠症候群の重要な危険因子である糖尿病と冠動脈粥状硬化の関連性について、まず検討した。II型糖尿病のモデルであるOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty(OLEFTF)ラット30匹と非糖尿病(nonDM)ラット30匹で、10、20および30週齢でOGTTを施行、15および30週齢で大動脈の血管内エコー像を内圧とともに記録した。血管内エコー像から最大、最小大動脈径を計測してstiffness parameter βを算出した。5、15および30週齢で、10匹づつのラットを屠殺して病理学的検討を加え、コラーゲン量を求めた。10週齢での血糖、インスリン濃度はOLETFラットでnonDMラットに比して高値であり、この時期でのβは、OLETFラット(2.5±0.9)と高値を示し(nonDM:1.4±0.4;p=.0006)、血管弾性は障害されていた。コラーゲン量/乾燥重量は、OLETFラット(33.5±3.1)で大(nonDM:28.7±3.5;p<.05)であった。組織学的にはOLETFラットで壁厚の増加を認めた。結論:高インスリン血症によって血管壁のコラーゲンが増生して、血管弾性が障害された。 2.臨床での検討:対象は心筋虚血精査目的にて冠動脈造影を施行した21例(年齢62.8±13.6歳)。カテ室入室直後ホルター心電図を装着。冠動脈造影後,有意狭窄を認めない冠動脈近位部に血管内エコーカテーテルを留置し、ISDN2mg冠注前から冠注後3分までをビデオに記録。血管壁を正常部位(N)とプラーク部位(P)に分け、ISDN冠注前後での辺縁長の増加率(%D.N,%D.S)を求めた。ISDN冠注直前512秒間の心電図RR間隔データをFFTにて解析し、高周波成分(HF)を副交感神経活性、低周被成分(LF)を交感神経活性とした。Nは16部位、Pは13部位であった。Nの拡張率はSに比し有意に大であった(18.2±10.4% VS 9.1±6.4%,P<.05)。%D.NとHFは有意な正相関(r=0.749,p<.001)を示したがLFとは相関しなかった。%D.SはHF,LFのいずれとも相関しなかった。結語:IVUS上の冠動脈健常部位は副交感神経によりトーヌスが制御されるが、動脈硬化によりその制御は障害される。
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