研究概要 |
B細胞分化障害を特徴とするX連鎖性無ガンマグロブリン血症(XLA)は先天性免疫不全のなかで比較的多い疾患である。我々は責任遺伝子Bruton′s tyrosine kinase(Btk)産物の発現をフローサイトメトリー法にて解析、患者および保因者を簡便に診断できることを世界で始めて明らかにした(Blood 91,595,1998)。抗Btk単クローン抗体を請求のあった世界各国医師に提供し、この方法の有用性が確認されている。本年はこの簡易診断法を用い全国レベルでのXLA症例の発見に努めるとともに、Btk発現の生物学的意義について基礎免疫学的検討をも行い、以下の結果を得た。 1) 全国から診断依頼を受けた例を対象に我々の開発したフローサイトメトリー法による簡易診断法にてスクリーングし、さらに遺伝子変異解析を行い、本年新たに46例のXLAを見出した。 2) 厚生省原発性免疫不全症候群調査研究班に1992年から1998年の間に分類不能型免疫不全症と登録されている男性21例の主治医に依頼状を送付、XLAの発掘を試みた。解析可能な男性11例の中から7例のXLA、5例の母親が保因者であることが確認された。 3) LMP2陰性EBV感染にて5症例からB細胞株を樹立し、抗IgM抗体刺激によるCa流人がXLAでは著明に減弱していることが観察され、B細胞活性化に伴う細部内シグナル伝達におけるBtkの役割が強く示唆された。 4) BtkはB細胞に加え単球にも発現しているがその意義については明らかではない。LPS刺激後の単球におけるモノカイン(GM-CSF、G-CSF、M-CSF、IL-8)産生を検討したところ、XLAにおいてGM-CSF産生の欠如が観察され、Btkの新たな生物学意義が示唆された。
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