現在わが国において、β酸化異常症の診断、病因解析のできる施設は限られ、診断されずにかくれている患者も少なくないと思われる.本研究において、β酸化異常症の診断法、解析法を確立した.今後、わが国のβ酸化異常症の頻度、遺伝的背景が明らかになるものと思われる.3年間に得た成果の概要は以下の通りである. 1)わが国のβ酸化異常症患者の実態調査:1985年〜2000年の間に診断された日本人患者60例の発症形態、診断方法、予後等について検討した.CPT2欠損症、グルタル酸尿症2型が最も多かった.またライ症候群様症状は乳児期〜3才頃に多く、年長児には骨格筋症状が多かった. 2)尿ろ紙を用いるGC/MSスクリーニング法の確立:本症は尿中有機酸分析で、非ケトン性ジカルボン酸尿症などがみられることが多い.簡便に有機酸スクリーニングを行うために、検体搬送に有利な尿ろ紙を用いたGC/MS分析法を確立した. 3)血液ろ紙を用いるGC/MS分析によるスクリーニング法の確立:β酸化異常症を生化学診断するために血液ろ紙を用いて血中遊離脂肪酸分析をGC/MSで行う方法を開発した.タンデムマスによるアシルカルニチンデータをカバーできる. 4)培養細胞を用いた脂肪酸取込みによる診断法の確立:β酸化異常症の特定の酵素欠損を直接証明することは必ずしも容易ではない.放射性同位元素ラベルの脂肪酸の培養細胞への取込みによってβ酸化能を評価しスクリーニングする方法を確立した. 5)極長鎖アシルーCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症とグルタル酸尿症2型(GA2)の日本人患者の病因解析:5例のVLCAD欠損症日本人患者の遺伝子解析を行い、遺伝子/臨床型の関連性のあることを証明した.また日本人GA2患者細胞の検索を行ってETFα2列とETFβ欠損症1例を同定した.そして遺伝子レベルで病因を明らかにした.
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