研究概要 |
1)ロリクリン角皮症と辺縁帯形成 ロリクリンは辺縁帯の主成分である。我々は本蛋白の遺伝子変異による角化異常症を世界で始めて発見しこれをロリクリン角皮症と命名した。我々はロリクリン角皮症患者におきている遺伝子変異から予想される変異蛋白を特異的に検出できる抗体の作成に成功し、その蛋白局在をあきらかにした(J Invest Dermatol,115:1095-1103,2000)。その結果、変異蛋白は顆粒細胞、角質細胞の核に集積していることが明らかになった。意外なことに辺縁帯にはほとんど移行しないことかが判明し、辺縁帯の形成が直接障害される可能性は否定的となった。変異ロリクリンはとりわけ初期には核小体に局在することから、我々は変異ロリクリンは角化細胞の核、核小体機能を障害することにより表皮細胞の分化過程をちょうどDNA断片化が起きる時点で停止させると推定した。 ロリクリン遺伝子異常が見られた紅斑角皮症と共通する臨床症状を呈するあらたな紅斑角皮症患者1名を検討し、本例ではロリクリン変異蛋白の発現がみられず、別の疾患であることが確認された(Br J Dermatol 143:1283-1287,2000)。 2)シスタチンAの遺伝子発現調節機構 辺縁帯の成分であるシスタチンAの遺伝子発現が転写因子AP-2gにより増強することを明らかにした(BBRC278:719-723,2000)。 2)ケラチンの脱イミノ化 辺縁帯に架橋されるケラチンであるK1はヒト表皮角層で脱イミノ化による翻訳後修飾をうけるが、尋常性乾癬表皮ではK1は発現しても脱イミノ化されないことがわかった(J Invest Dermatol 114:701-705,2000)。
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