研究概要 |
天庖瘡抗体がdesmoglein3に結合した後どのような機序で細胞間接着障害、すなわち水庖に至るかという問題に関して昨年度の主な研究成果は、desmoglein3のPKC非依存性リン酸化と分解、plakoglobinのdesmoglein3からの解離(Aoyama,Owada,Kitajima,Eur J Immunol29:2233-2240,1999)、desmoglein3欠損desmosomeの形成(Aoyama,Kitajima,J Invest Dermatol112:67-71,1999)を見いだしたことであったが、本年度はこれを基本にdesmoglein3欠損desmosomeの形成過程を主に解析した。その結果、desmoglein3分子が半desmosome状態で存在し、desmosome形成過程でその半desmosomeが互いに向かい合って会合しdesmosomeを形成することを時間差ラベル免疫電顕で証明した。さらに、この過程で、天庖瘡抗体のdesmoglein3との結合がdesmoglein3の集合と細胞内への内包化(endosome)を惹起し、そのリン酸化と相まってdesmoglein3欠損desmosomeの形成することを初めて示した(Sato,Aoyama,Kitajima,Lab Invest80:1-10,2000)。一方、臨床的にも抗desmoglein抗体の重要性を示した(Aoyama,Kitajima,et al,Eur J Dermatol10:18-21,2000)。 以上、我々のこれまでの研究成果は、細胞間接着分子の接着制御と天庖瘡の水庖形成機序に関する新しい視点を開き、海外でも追試され、さらに展開されつつある。とくに今後はdesmogleinを中心にしたdesmocollin、desmoplakin、p120cateninの分子機能と集合分散機序およびその細胞骨格との制御シグナル伝達が重要であると推察した。これらから、今後も水庖症をモデルとした我々の分子病態細胞生物学的研究が妥当であることが認められ、さらに本研究を発展させ、その診断と治療の論理的開発を目指したい。
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