研究概要 |
これまでの研究により、テープストリッピングまたはアセトンによる脂質抽出により、角質層を急性に破壊した皮膚では、角質層破壊後12〜24時間をピークに表皮ランゲルハンス細胞がTh細胞ばかりでなくCTLにも抗原提示できるように強く活性化し、近傍のリンパ節へ移動することを証明した。本年度研究においては、角質層破壊皮膚へのCTLエピトープとなる抗原ぺプチドまたはDNAの塗布における生体内でのCTL活性、さらには抗原ペプチド含有テープを開発し、その角質層破壊皮膚への応用について検討を行った。 1:ペプチドの塗布 (1)テープストリッピン皮膚へ蛍光標識OVAペプチドを塗布後、経時的に近傍リンパ節内のペプチド含有細胞数を計測したところ、ペプチド塗布から12時間以降に塗布ペプチドが検出された。 (2)B16メラノーマエピトープであるTRP-2ペプチド、3LL肺癌エピトープであるMUT1ペプチドを角質層破壊皮膚に塗布した場合、それぞれに特異的なCTL活性が生体内で高まるが、その効率は、それぞれのペプチドに特異的なCTLプレカーサー頻度に依存していた。 (3)単離ランゲルハンス細胞にHSP-TRP-2ペプチドをパルスした場合、TRP-2塗布よりもCTL誘導能が明らかに高まったが、その角質層破壊皮膚への塗布では何の増強も観察されず、逆にCTL誘導効率は減少した。 2:DNA (1)1.2Kbよりなる蛍光標識DNAをテープストリッピング皮膚に塗布したが、表皮内へのDNAの浸透は観察されず、従ってランゲルハンス細胞内へのDNAの取り込みは観察されなかった。 [1-(3),2-(1)からペプチド以上の大きさの分子は表皮内に浸透しずらいと考えられた。] 3:ペプチド含有粘着テープ TRP-2またはOVAペプチド含有粘着テープを日東電工(株)との共同で開発した。皮膚に貼った場合、脂溶性のTRP-2ペプチドテープはペプチドが放出されにくいが、水溶性のOVAペプチドは効果的に放出され、表皮内に浸透することが判明した。
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