研究概要 |
角質層を粘着テープによるストリッピング(TS)で急性に破壊した皮膚は、その後24時間をピークに物質透過性を高め、表皮ランゲルハンス(LC)も活性化し、MHC分子,CD40,CD80,CD86などT細胞の抗原提示に重要な分子の発現を増強させ、近傍リンパ節へと移動する。そこで、B6マウスを用いた系でTS後24時間が経過したマウス耳翼皮膚にメラノーマ関連抗原(MAA)ペプチドTRP-2を塗布したところ、近傍の頚部リンパ節内でTRP-2特異的CTL誘導が見られた。さらにその2週間後に腹部TS皮膚を用いてTRP-2ペプチド塗布を再度行えば、全身でTRP-2特異的CTLを感作できることが判明した。In vitro実験からTS皮膚を介したCTL感作は表皮LCに依存的である。TS皮膚を用いてTRP-2免疫したマウスはメラノーマ細胞の移植を拒絶できるが、同様に肺癌ペプチド免疫したマウスに肺癌細胞を移植した場合、その効果はメラノーマ細胞を用いた場合より弱い、この原因として、もともと存在する種々の腫瘍に特異的なCTLプレカーサー頻度が多分に影響している。次にマウス研究をヒトで応用するために、角質層破壊後のヒト表皮LC表面抗原を解析した結果、マウスと同様にMHC,CD40,CD80,CD86分子の発現がガラス基盤付着瞬間接着剤ストリッピング(GS)を用いた角質層破壊から12〜24時間後に増強すること、さらには最大限のLC活性化を実現するためには、年齢に応じたGS回数が重要なことが判明した。さらに、GSにより角質層破壊した皮膚へのマラリアまたはHIVペプチド塗布では、その後末梢血中におけるそれらペプチド特異的なCTL頻度がわずかながら(4〜7%)増強することも判明した。以上の結果より、経皮的ペプチド免疫法はマウスなどげっ歯類ばかりでなくヒトにおいても応用可能であると考えられた。
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