研究概要 |
昨年までの研究成果をまとめ、放射線腫瘍学では非常に権威のあるInt J Radiation Oncology Biol Physに投稿し、世界的にもこれ程の多数例の報告はないということでその価値を認められ掲載された(Hayabuchi,N,Shibamoto Y, et al : Primary central nervous system lymphoma in Japan : A nation wide survey. 44 (2),265-272,1999)。これは既に報告した544例の中枢神経初発悪性リンパ腫症例の中から、追跡が可能であった466例について全体の治療成績とそれに影響を与える因子について明らかにしたもので、年齢や全身状態が治療成績に影響を与える他、腫瘍の個数、B症状の有無、髄液播種の有無、LDHの上昇の有無なども長期的な治療成績に影響することがわかった。ただ、これらの成績は1985年から1994年までのやや古い症例であるので、今後のprospective studyの計画を立てるためには、最近のMRIを中心とした画像診断法の進歩を取り入れ、MTXの大量療法などの新しい治療法が行われた症例による検討が必要と考え、今回さらに1995年から1999年までの治療例についての多施設の症例を集積し検討の準備を進めている。 一方、中枢神経初発悪性リンパ腫症例に対し、MTXの大量化学療法と放射線治療の後、ステロイドを内頸動脈や椎骨動脈領域から動注する試みを始めた。最初の臨床例は再燃例で既に放射線治療や化学療法が行われており、治療法が他になかったところからこの治療法を試みたところ、優れた効果が認められた一方、副作用や合併症は全く認められなかった。そこで、初回治療例にも試みることにして現在までに6例に試み、いずれも高い効果が認められた。今後、治療例を増やす一方、合併症の発生の有無などの慎重な長期観察が必要であると考えている。
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