研究概要 |
アルツハイマー病(AD)においては脳にのみアミロイドβ蛋白(Aβ)が沈着する。この背景にある分子生物学的機構を明らかにするために本研究では、新たなるモデルとなりうる特徴ある細胞株、横紋筋細胞を中心に細胞内輸送に影響を与える各種薬剤を添加してアミロイド前駆体蛋白(APP)、プレセニリン1(PS-1)遺伝子の発現、細胞内処理過程について検討を加えた。 I) 各種阻害剤添加、非添加の場合、培養横紋筋細胞(CRL7061)におけるAPPの公解過程に関する研究:chloroquine,monennsin,brefeldin,concanamycinなどの強力な蛋白輸送経路阻害剤を添加して細胞を培養したのち、APP、PS-1の分解過程を以下の通り検討した。 1) APP蛋白ならびにPSl蛋白の細胞内局在の検討:APP、PS1、ならびに細胞内小器官に対する特異抗体を樹立した。阻害剤によってそれぞれ特有の空胞が形成され、蛍光抗体法によって観察すると、APP、PS-1は、一部空胞に一致して局在した。二重染色の結果、PS-1はGolgi装置にも、存在することが確認された。 2) APPならびにPS1遺伝子のmRNAをRT-PCRにての測定すると、CQN添加の際には、増加を示した。 3) APPからAβ生成に至る細胞内処理過程の生化学的検討:ウエスタン・ブロット法によるAPP断片、PS-1断片の検討:細胞分画後の画分について検討すると、amiloidogenicな10k前後のバンドは増加を認めた。4kのはCQN,BFA,ConAによっても、存在が確認された。PS-1については、20,30,50kDaのバンドが検出され、阻害剤添加によって変化を示した。 以上の結果、APP,PS-1の蛋白は細胞内で密接に関連しており、Aβ産生経路はエンドソーム・リソソーム経路を中心に複数存在することが示唆された。 II) 培養細胞への遺伝子導入により過剰発現させた細胞株の樹立:wild type(APP770),mutant type APP遺伝子(British type,Dutch type,Swedish type)は、Dr Goldgaber(NY)から供与をうけて、発現ベクターに組み込んだが、横紋筋細胞への導入は成功しなかった。
|