研究概要 |
細胞内ミトコンドリアに鉄過剰蓄積が起こるメカニズムに,ヘモクロマトーシスの原因遺伝子として単離されたHFE遺伝子が関与しているかを調べるため以下の実験を行い結果を得た. 1. (1)ヒト肝細胞株chang細胞からtotal RNAを精製し,RT-PCR法により全蛋白翻訳領域を含むヒトHFE cDNAをクローニングした.本遺伝子をgreen fluorescence protein(GFP)を合成するpEGFPベクターに組み込みHFE-GFP融合蛋白を発現するプラスミドを作成した.(2)(1)で作成した発現ベクターを肝癌細胞株HLF細胞にリポフェクション法で導入し,Geneticinでスクリーニングすることによって、安定細胞株HFEtr細胞を樹立した.また,mock細胞としてpEGFPベクターを導入した安定細胞株も樹立した. 2. HFEtr細胞の蛋白を抗GFP抗体で免疫沈降し、抗GFP抗体および抗卜ランスフェリン レセプター(TfR)抗体でWestem blot解析を行い,同じ分子量に陽性バンドが出現することからHFEとTfRは連携していることが明らかになった. 3. 蛍光顕微鏡にてHFEtr細胞を観察し,HFE-GFP蛋白が細胞膜および核周囲に局在することを明らがにした. 4. HFE細胞,mock細胞,HFEtr親細胞を用いて(1)トランスフェリン(TF)とTfRの親和性(2)Tfの細胞内リサイクリング(3)トランスフェリン鉄の取り込み(4)細胞外への鉄の放出について検討した.HFEの過剰発現により(1)TfとTfRの親和性が低下する(2)特にTfの細胞表面へのリサイクリングが低下する(3)トランスフェリン鉄の取り込みが低下する(4)細胞外への鉄放出には閃与しない事が明らかになった. 以上よりHFE蛋白はTfRと,連携してその機能を調節するとともに,トランスフェリンのリサイクリングを変化させる重要な機能を担っていることを初めて明らかにした.
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