G-CSFによる末梢血幹細胞動員と免疫担当細胞機能修飾メカニズムの解析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10470210
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 原田 実根 岡山大学, 医学部, 教授 (00019621)
• 研究分担者: 竹中 克斗 岡山大学, 医学部・附属病院, 助手 (30301295) ; 品川 克至 岡山大学, 医学部・附属病院, 助手 (00273988) ; 石丸 文彦 岡山大学, 医学部・附属病院, 助手 (50284097) ; 木浦 勝行 岡山大学, 医学部, 助手 (10243502)
• キーワード: 末梢血幹細胞移植 / CD34 / G-CSF / VLA-4 / TNF-α / インターフェロンγ / NK細胞 / IL-10

研究概要

1.G-CSFによる末梢血幹細胞動員:(1)接着分子の解析:G-CSF投与前後で末梢血および骨髄細胞における種々の接着分子の発現を検討した結果、CD34陽性細胞のVLA-4陽性率が、末梢血で骨髄より低かったが、G-CSF投与によっては、骨髄、末梢血いずれにおいてもCD34陽性細胞中の接着因子の発現に有意差は認められなかった。(2)動員効果の予測:健常人にG-CSFを投与して末梢血幹細胞を動員する場合、約20%の症例で移植に必要な造血幹細胞を採取できない例があった。G-CSF投与前の種々の検査では動員効果の予測は不可能であったが、G-CSF投与4日目のLDH、CRP、末梢血中の幼若顆粒球(骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球)数によって、ほとんどの例で予測可能であり、採取前に日常検査で動員効果を予測できることが示唆された。
2. G-CSFの免疫細胞機能修飾に関する検討:健常人にG-CSFを4日間投与することにより、(1)末梢血リンパ球を同種抗原とmit0genで刺激したときの増殖能とinterleukin-4(lL-4)およびinterferon-γ(IFN-γ)の産生能が、G-CSF投与前と比較して低下すること、(2)LPS刺激による末梢血単球のtumor necrosis factor-α(TNF-α)およびIL-10産生能がG-CSF投与後では低下すること、(3)末梢血のNK活性がG-CSF投与前と比べて低下すること、が明らかとなりG-CSFは免疫担当細胞機能に対して抑制的作用を持つことが示唆された。
3. 同種末梢血幹細胞移植後の造血前駆細胞の動態:移植細胞と移植後1日目の末梢血中のコロニー形成細胞数、CD34陽性細胞中のCD38およびHLA-DRの陽性率を比較することにより、移植後1日目には分化傾向のある造血前駆細胞が末梢血中からより選択的に消失して、未分化な造血前駆細胞が末梢血中に留まることが明らかになった。CD34陽性細胞中のVLA-4、VLA-5の陽性率には差は無く、VLA-4、VLA-5以外の接着分子の関与が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Harada M,et al: "Allogeneic peripheral blood stem cell transplantation for standard-risk leukemia. A multicenter pilot study:Japanese-----." Bone Marrow Transplant. 21(S.3). S34-S56 (1998)
• [文献書誌] Tsuchiyama J,et al: "Characterization of a movel natural killer-cell line(NK-YS) established from natural killer cell lymphoma/leukemia -------." Blood. 92(4). 1374-1383 (1998)
• [文献書誌] Harada M,et al: "Graft rejection and recovery of host-derived hematoppoiesis after allogeneic bone marrow transplantation:relation to-------." Int J Hematol. 68(1). 95-100 (1998)
• [文献書誌] Katayama Y,et al: "Replating potential of colony-forming units of granulocytes/macrophage CFU exponded ex vivo by stem cell factor ----------." Int J Hematol. 68(2). 157-168 (1998)
• [文献書誌] Kawano Y,et al: "Partially mismatched pediatric transplants with allogeneic CD34^+ blood cells from a relater donor." Blood. 92(9). 3123-3130 (1998)
• [文献書誌] Mahmut N,et al: "Analysis of circulating hematopoietic progenitor cells after peripheral blood stem cell transplantation." Int J Hematol. 69(1). 36-42 (1999)
• [文献書誌] 原田実根,他(編): "新しい造血幹細胞移植-その現状と成績-" 南江堂,東京, (1998)
• [文献書誌] 原田実根: "別冊「医学のあゆみ」血液疾患 State of arts ver2" 医歯薬出版,東京, 426-428 (1998)