本研究では我々の開発した輸入・輸出細動脈を単離灌流する方法を用い、糸球体血行動態の解析を行い、高血圧症や腎障害での異常を検討した。まず、正常ラビットの輸入細動脈を用い、アンジオテンシンII(AngII)の1型及び2型(AT_1及びAT_2)受容体と一酸化窒素(NO)やアラキドン酸のチトクロームP450代謝産物である20-ハイドロキシエイコサテトラエノイン酸(20-HETE)やエポキシエイコサトライエノイン酸(EET)の相互関係を検討した。その結果、1)NOとEETは共に血管拡張作用があり、AT_1受容体による血管収縮に拮抗すること、2)AT_2受容体は血管拡張作用を示し、AT_1受容体による血管収縮作用に拮抗すること、3)そしてその機序にNOではなくEETが関与すること、4)20-HETEはAngIIの血管収縮作用に重要であることが示された。次にまだ高血圧を発症していない4週齢の高血圧自然発症ラット(SHR)とその対照(WKY)の輸入細動脈で検討した。その結果、1)AngIIに対する血管収縮反応はSHRで大きいこと、2)AT_2受容体を阻害するとWKYでのみAngIIの血管収縮作用が増強すること、3)AT_2受容体を介する血管拡張作用はWKYで認められたが、SHRでは認められないことを観察した。 以上より、SHRでは高血圧発症前より輸入細動脈のAngIIに対する感受性が亢進し、その機序にAT_2受容体を介する血管拡張作用の障害があることが示唆された。
|