研究概要 |
生体におけるTRHのプロラクチン分泌、合成における役割の検討 1, TRH欠損マウスにおいて下垂体プロラクチン産生細胞を免疫組織染色を行い、野生型マウスと比較した。TRH欠損マウスプロラクチン陽性細胞には、数、染色性ともに、明らかな変化は認めなかった。 2, 非授乳期のTRH欠損マウスの血清プロラクチン値は正常で、下垂体プロラクチン含量、分子量にも有意な差は認めなかった。しかし、TRH欠損マウスの下垂体プロラクチンmRNAレベルは、野生型の約60%に低下していた。 この変化は、甲状腺ホルモンの補充により、正常レベルまで回復した。 3, 授乳期、授乳時のTRH欠損マウスの血清プロラクチン値は野生型の約50%に低下していた。また、下垂体含量も約50%の低下を認めた。この変化は、甲状腺ホルモンの補充によっても変化しなかった。さらに、下垂体プロラクチンmRNAレベルを定量したところ、TRH欠損マウスでは、野生型の約60%に低下していた。このmRNAレベルの変化は甲状腺ホルモンの補充によって正常レベルまでは回復しなかった。 4, TRH欠損マウスの母親からの仔マウスは正常に発育した。授乳期のTRH欠損マウスの乳腺の形態をヘマトキシリン・エオジン染色で光顕にて観察したが、野生型と比較して、明らかな変化を認めなかった。 これらの結果から、TRHは、特に授乳時において、下垂体プロラクチン産生細胞の正常な機能発現に対して重要な役割を有していることが明らかになった。さらに、1998年5月、新たなプロラクチン分泌ペプチドがクローニングされ、TRHとこのプロラクチン分泌ペプチドとの相互作用についても現在、解析を行っている。
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