研究概要 |
アドレノメデュリン(以下AMと省略)は褐色細胞腫より発見された降圧性ペプチドで、強力な血管弛緩作用を示す。これまでの研究で、血管平滑筋(VSMC)や内皮細胞(EC)のみならず、間質系の線維芽細胞がAM遺伝子を活発に発現し、またその産生は炎症性サイトカイン、リポポリサッカライド(LPS)や種々の循環調節因子で制御されていることを明らかにした。 本年度は、ラットECでのAM産生調節について詳細に検討し、またECにおける血管収縮因子であるエンドセリン-1(ET)と比較することにより、血管トーヌス調節におけるAMの役割について考察した。 培養ラットECのAM産生調節は、基本的にVSMCのAM産生調節と類似しTNFやIL-1で強く刺激され、またTNF,IL-1,LPSの共投与によりAM産生はさらに増加し、敗血症性ショック時のAM産生に内皮細胞も関与する可能性が示された。LPSをラットに投与し、内皮の有無によるAM遺伝子発現を比較したところ、内皮の除去によりAM mRNA量は相対的に減少し、血管壁AM系において内皮由来AMが重要な位置を占めることが確認された。ラットECでAM産生を最も強く増強したトロンビンは、ET産生も強く亢進し、フォルボールエステルはAM及びET産生を共に低濃度では刺激、高濃度では抑制した。 また、ステロイド,甲状腺ホルモンは両者の産生を弱く刺激した。一方、TGF-βは強くAM産生を抑制したが、ET産生を強く抑制し、炎症性サイトカインもAM産生を促進するが、ET産生には変化を与えなかった。IFN-γ,上皮増殖因子(EGF)はAM産生を抑制したが、ET産生に変化はなかった。 これらの結果より、ECの産生する主要なペプチド性弛緩,収縮因子であるAMとETは基本的に異なった調節を受け、血管トーヌス調節において相反する因子としてECより産生されると推定された。
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