研究概要 |
本研究では、アドレノメデュリン(AM)及びその受容体の心血管系における産生調節及び作用機序と病態生理学意義の解析を行い、以下のような成果を得た。 これまで心不全の病態と血中AM濃度について報告してきたが、今回、(1)心不全モデルにおけるAMの経静脈的投与効果、(2)肥大心、不全心における心筋AMの意義、及び(3)不全心で亢進するAMの培養心筋、線維芽細胞への直接作用について検討した。冠動脈結紮により作成した慢性期の心不全ラットにおいてAMは血行動態、腎機能を有意に改善した。圧負荷、容量負荷の心不全モデルにおいて心筋AM濃度は他の分子マーカーよりも鋭敏に増加を認めたが、その機序は圧負荷、容量負荷で異なっていた。培養心筋、線維芽細胞におけるAMの効果は弱い相加的な肥大促進作用を認め、線維芽細胞において増殖およびコラーゲン産生に対して抑制効果を認めた。 一方、AMの作用機序の解明の一環として、マウスAM受容体の構造解析と敗血症の病態モデルにおける受容体の発現解析を行った。マウスおよびRAMP1,2,3のcDNAのクローニングを行った結果、CRLRはヒトおよびラットCRLRと非常に高い相同性を示したが、マウスRAMP1,2,3のうちRAMP2はヒトとの相同性が低かった。つぎに、これらの発現組織の分布を検討したところ、CRLRとRAMP2は肺に強く発現し、RAMP1は脳や胸腺、RAMP3は脳、腎、精巣と特徴的な分布を示した。LSP投与12時間後のCRLRとRAMP2は、肺での発現が著明に減少し、RAMP3は肺で著明に増加した。肺での各遺伝子の発現を経時的に検討した結果、CRLRとRAMP2のmRNAはかなり急速に減少し、LPS投与後3時間前後で最低となり、以後12時間まで変化しなかった。RAMP3は、病態末期になってかなり上昇することがわかった。AMの血中濃度はLPS投与後速やかに上昇することが知られている。肺はAMの主要結合部位であることから、敗血症における血中AMの顕著な増加は、AMの遺伝子発現・分泌の増加に加えて、肺においてCRLRとRAMP2で形成されるAM結合部位が著明に減少することも関係していると思われる。
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