研究概要 |
山縣らがMODY家系で発見したHNF遺伝子異常に伴う糖尿病は、現在知られている糖尿病の遺伝子異常としては、最も頻度の高いものであることが明らかになった。我々は、HNF遺伝子異常がMODY以外の1型、2型糖尿病の病型もとる可能性を考え、一般の糖尿病患者において、HNF遺伝子異常を検索した。 46名の1型および52名の2型糖尿病(臨床的にMODYと診断される10名も含む)と診断されている糖尿病患者のHNF-1α,HNF-1β,HNF-4α遺伝子異常について、PCR直接シークエンス法にて解析した。その結果、4名の患者(3名の1型糖尿病、1名のMODY)において、HNF-1α遺伝子変異(G415R,R272C,A site(promoter),E48fsdelG)を同定した。これらの変異を導入した変異体HNF-1αでは、インスリン遺伝子の転写活性能が減弱しており、インスリン遺伝子の発現低下が糖尿病の発症に関与している可能性が示された。HNF-1βについては、1例のMODY患者においてS36F変異を同定した。また、群馬大学武田教授との共同研究で、ヒトHNF-3βcDNAおよび遺伝子をクローニングし、80名の家族歴を有する2型糖尿病患者における遺伝子異常の有無を検討した結果、1名の濃厚な家族歴を有する2型患者においてA86T(転写活性領域のミスセンス変異)を同定した。 一方、変異HNF-1α遺伝子を膵β細胞に発現させたトランスジェニックマウスでは、糖尿病が発症し、HNF遺伝子異常が糖尿病の原因となることをin vivoで証明した。
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