1.レプチン過剰発現マウスと遺伝性肥満糖尿病モデル動物であるKKA^yマウスを交配させ、レプチン過剰発現KKA^yマウスを作製した。そのマウスでは、摂食は抑制されず、肥満の発症は抑制できなかったが、糖尿病の発症時期がレプチン過剰発現でないものに比べ、遅延していた。6週齢のマウスではKKA^yマウスでは著名な高インスリン血症が認められ、一方、レプチン過剰発現KKA^yマウスでは高インスリン血症は認めなかった。さらに、高脂肪食負荷によって、レプチン過剰発現マウスでも高血糖とインスリン抵抗性を来したが、レプチン過剰発現マウスではカロリー制限により、より速やかな体重減少と血糖正常化が確認され、レプチンは、抗糖尿病薬としての可能性が示された。 2.正常マウスに全身および脳室内にレプチンを投与した場合およびレプチン過剰発マウスの肝臓および筋肉において、インスリンによるIRS-1結合PI3キナーゼの活性化は亢進していることを見いだした。インスリンによるインスリン受容体、IRS-1のチロシンリン酸化は軽度亢進していたが、インスリンによるAktの活性化には差異は検出されず、レプチンのインスリンシグナルに及ぼす影響の多様性が示唆された。また、レプチン過剰発現マウスにおいてインスリンシグナルの構成分子の変化を探索し、探索したほとんどの分子においてその蛋白量に有意な変化は認められなかった。さらに、特に肝臓においてレプチンがあるフォスファターゼを介して単独あるいはインスリンシグナル伝達に影響を及ぼす可能性を示唆する結果を得ており、現在追究中である。 3.UCP3の過剰発現マウスも作製し、各種負荷を行って解析中である。今後も、この動物を用いてエネルギー消費亢進のエネルギー代謝全体におよぼす影響や糖脂質代謝に対する効果についての検討を行う。
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