研究概要 |
肝移植における免疫寛容に関する検討をすすめ、いくつかの成果が得られた。一つは、Epstein-Barr virus感染症下では免疫抑制療法を極端にゆるめても拒絶反応が生じず、しかし、Epstei-Barr virus感染症が改善するにともなって拒絶反応が引き起こされるという臨床的事実と、そのメカニズムの解析である。Epstein-Barr virus感染細胞が産生すると考えられるインターロイキン-10がEpstein-Barr virus感染症下で血清において高値をとること、そして、感染症改善にともなって低下することが示され、Epstein-Barr virus感染によるTH1細胞抑制の関与が示唆された。第二に、Fas/FasLを介する免疫制御が、肝移植後の拒絶反応と感染症に関わっていることが示唆された。一方、インターロイキン-2,4,6,10,12およびTNF-alphaの測定を肝移植臨床例で行ったが、現行の検査精度で測定不能なサイトカインの変動が含まれることから、肝移植後の拒絶反応におけるこれらのサイトカインの及ぼす影響を解明するには至らず、測定法の検討をはじめ、今後の課題として残された。
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