研究概要 |
1. 全身におよぼす気腹の影響・・・CO_2気腹時の全身血行動態に及ぼす影響について,ラット気腹モデルを用い,検討した.その結果,心拍出量の低下,全身血管抵抗の上昇を認めた.一方で臓器血流は,胃・小腸・大腸・膵臓・脾臓の有意な血流低下を認め,冠動脈及び腎血流量は有意ではないものの低下する傾向を認めた(論文作成中).また,同時にバゾプレッシン拮抗剤の投与にて気腹中の有意な尿量増加が認められた(論文報告済).さらに,門脈血流量は有意に減少したが,肝動脈血流量は逆に有意な増加を認めた(論文作成中).他方,腹膜炎気腹モデルにて,気腹中のサイトカイン値は開腹群との比較で抑制が認められ,炭酸ガス特有の腹腔内環境変化が示唆された(論文作成中). 2. 癌の発育・増殖・進展に及ぼす影響・・・腫瘍増殖に対するCO_2気腹の影響をマウス大腸癌細胞皮下移植モデルを用いて検討した.腫瘍接種後4日目に気腹群,開腹群に分け1週間後に評価したところ,皮下腫瘍の増殖能は気腹群は開腹群に比し有意に低かった.また,マウス大腸癌細胞尾静注モデルを用い血行性転移に対するCO_2気腹の影響を検討した.気腹群は開腹群に比べ肺転移個数が有意に少なく,肺重量も有意に低かった.また,血中サイトカイン(IL-6,TNF-α)の誘導も気腹後は開腹後に比し有意に抑制されており,腫瘍の転移・増殖に関与していることが示唆された.また,気腹ガスをCO_2・ヘリウム・空気に変更し,ガスの違いによる血行性肺転移の影響を検討したが,肺転移個数,肺重量ともに有意差は認めなかった(論文作成中). 現在,脾注肝転移モデル,及び回盲部腫瘍縫着自然肝転移モデルを用い,炭酸ガス気腹の影響について検討をすすめている.
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