研究概要 |
全身ではなく、主に肝臓で発現しているHepatocyte Nuclear Factor-1(HNF-1)遺伝子プロモーターの支配下にヒトRb遺伝子を連結して、トランスジェニックマウスを作製し、2系統のトランスジェニックマウスを得た。A系統のマウスはトランスジーンを1倍体当たり11コピーもち、B系統のマウスは1倍体当たりトランスジーンを4コピーもっていた。Rb蛋白を肝臓に発現するトランスジェニックマウスではアポトーシスを誘導する抗Fas抗体やTNFα投与時におこる劇症肝炎が起こらないことが判明した。抗アポトーシス状態になっているメカニズムを明らかにするために、アポトーシス関連蛋白をウエスタンブロット解析したところ、Fas,Bcl-2,Bcl-X,Bid,Bad,ICE,CPP32,E2F1,E2F2,E2F3,E2F4,E2F5,p53などには変化がなかったが、Bax蛋白だけがRbトランスジェニックマウスの肝臓で減少しており、抗アポトーシス状態を担っている一つの因子であることが判明した。次に、このトランスジェニックマウスが化学発癌抵抗性を示すかどうかを検討した。化学発癌にはRbトランスジェニックマウス雌とC3H雄のF1(遺伝的背景:B6C3F1)を用いる。F1の内、ヒトRbトランスジーンを持たないマウスをコントロール、トランスジーンを持つマウスを実験とする。コントロールマウスでは、肝細胞癌と多数の結節が誘導された。Rbトランスジェニックマウスでは、結節数が明らかに減少した。また、肝細胞癌の出現は認められなかった。この結果から、Rb蛋白は生体の中では、発癌抑制に働いていることが明らかになった。
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