研究概要 |
消化器癌の予後を規定する最大の因子は、浸潤、転移である。この浸潤、転移の制御こそが我々消化器癌を治療する医師の解決すべき最大の問題である。 本研究は分子生物学的アプローチにより、まず癌の浸潤、転移に関わる標的分子を明確にし、さらに遺伝子工学的手法を持って、かかる標的分子の発現および機能の抑制、あるいは強制発現を実現し、合理的な癌治療戦略を確立しようとするものである。 本研究で得られた主たる成果は以下のとおりである。 1)肝に特異的に発現する遺伝子(kan-1と命名)を発見し、これが肝細胞癌の予後予知因子になることを示した。Rb蛋白を制御する新しい蛋白(gankyrinと命名)を発見し、これが肝細胞癌で過剰発現していることを示した。 2)臨床切除標本の検討からVEGF,MMPファミリー、Rho,HME・MMEが癌の浸潤、転移に関与することを示した。 3)VEGF遺伝子導入癌細胞株を樹立し、VEGFの増殖、転移における意義を明らかにした。 4)MMP阻害剤、血管新生阻害剤の浸潤、転移抑制作用を明らかにした。VEGFの受容体Flt-1の可溶型の発現プラスミドを用いた遺伝子治療実験により、これが癌の腹膜播種を抑制することを示した。
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