研究分担者 |
土井 隆一郎 京都大学, 医学研究科, 助手 (20301236)
小切 匡史 京都大学, 医学研究科, 助手 (60283595)
笹井 啓資 京都大学, 医学研究科, 助教授 (20225858)
藤井 信孝 京都大学, 薬学研究科, 教授 (60109014)
今村 正之 京都大学, 医学研究科, 教授 (00108995)
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研究概要 |
1. アポトーシスの細胞内シグナル伝達機序と膵癌治療:膵癌組織標本の検索で,他の固形癌と異なり膵癌ではBcl-XやMcl-1などのアポトーシス抑制性Bcl-2蛋白が過剰発現していることが明らかになった.膵癌細胞株では放射線感受性と細胞のBax/Bcl-2比が相関し,放射線耐性株ではBcl-Xの誘導が認められた.一方,外因性のCDK阻害剤はBax/Bcl-2比の上昇を伴うアポトーシスがみられ,放射線照射との相乗的な作用も認められた.シグナル伝達の改良により膵癌治療の向上が期待される. 2. 遺伝子異常に立脚した新規抗癌剤開発:新規ソマトスタチン誘導体(TT232)を合成し,膵癌細胞株での抗腫瘍効果を検討したところ,増殖因子受容体の脱リン酸化による腫瘍増殖抑制作用が認められた.また増殖因子EGFRの選択的リン酸化阻害剤によって腫瘍増殖抑制がみられ,これらの遺伝子異常に立脚した新規抗癌剤の臨床応用への可能性が示唆された. 3. tumor dormancyをめざした膵癌治療法:5FUは進行膵癌症例に有効な唯一の治療薬であるので,5FUの標的分子であるTSとDPDの膵癌細胞と膵癌切除標本でのmRNA発現を検討した.その結果,TSとDPD発現は膵癌細胞の5FU感受性と密接に相関し,膵癌原発巣と肝転移巣の比較では転移巣でTSとDPD発現がより亢進していることをが明らかになった.実際の臨床肝転移症例で5FU持続肝動脈内投与でtumor dormancyの得られた症例があり,TSとDPD発現量が低値であることより,両者の関連性が示唆された.
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