研究概要 |
1)アポトーシスの細胞内シグナル伝達機序と膵癌治療(細谷,土井,笹井,今村) 膵癌細胞の放射線アポトーシス誘導性にBcl-2関連遺伝子が大きく関与し,特に,放射線抵抗性とBcl-XL遺伝子によるアポトーシス抵抗性が密接な関連があることを明らかにした.逆に、Bcl-XLのアンチセンス・オリゴヌクレオチドを膵癌細胞株に導入すると放射線感受性が約10倍に増強した.また膵癌切除組織と培養細胞におけるFas/FasL,DcR3,LIGHTとその受容体の遺伝子発現を解析し,これらのFAS関連遺伝子が強発現していることと,膵癌における腫瘍免疫機構からの回避機序の関連性を明らかにした. 2)膵癌遺伝子異常に立脚した新規抗癌剤開発(細谷,藤井,土井) 膵癌の遺伝子異常が最も高頻度である癌抑制遺伝子はp16INK4であることが知られているが,我々はアミノ酸20個のp16活性中心ペプチドとアンテナ遺伝子ペプチドとの結合ペプチドがの膵癌細胞導入実験を行った.その結果,G1期休止による膵癌細胞増殖抑制が明らかになり,同ペプチドがヌードマウス皮下移植系でも抗腫瘍活性を有することを実証した. 3)tumor dormancyをめざした膵癌治療法(細谷,藤井,今村) インテグリンαvβ3の選択的拮抗阻害剤であるcyclic RGDペプチドを改良し,Eアルケン化により新しいペプチド系薬剤を創製した.このRGDペプチドが血管内皮の基質阻害作用と,VEGF刺激下増殖の抑制作用において旧来のRGDペプチドに比し強力であることを明らかにした.今後,新しいRGDペプチドをtumordormancyを目指した膵癌治療法の研究に展開させる.
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