研究課題
はじめに昨年の研究にて、神経栄養因子GDNFが膵癌細胞の浸潤誘導作用を有していることを明らかにした.本年度は[1]この浸潤誘導作用が抗GDNF抗体により阻止されるか.[2]膵癌細胞に対するGDNFの走化性について.[3]手術時に採取された腹腔神経叢においてGDNFが発現しているかどうか.[4]GDNFにより、膵癌細胞膜上に存在するRetレセプターが活性化しているかどうか.以上4項目について研究を行った.結果[1]Double chamber invasion assay法を用いて、抗GDNF抗体を添加し、細胞数を計測すると、コントロールにくらべて、有意に細胞数の減少が認められた.[2]Checkerboard analysis法を用いた検討により、GDNFは膵癌細胞に対して、chemotaxisis chemokunesisの両方の作用を有していることが明らかになった.[3]免疫組織学的検討により、腹腔神経叢のうち、神経線維を取り囲む神経鞘細胞に発現が見られた.[4]膵癌細胞をGDNFで刺激し、Retレセプターの活性化をprotein tyrosine kinaseにより測定した.GDNF刺激により、コントロールにくらべ有意に活性が増加した.まとめGDNFによる膵癌細胞の浸潤誘導はRetレセプターの活性化を介し、細胞内へシグナルを伝達することにより行われている、と考えられた.今後は近年報告されたGDNFファミリーであるNeurturinについても検討を加える予定である.