研究課題
研究の目的:我々は膵癌の特徴的浸潤形式である、神経浸潤のメカニズムを基礎的、臨床的に解明し、さらに臨床応用の道を探ることを目的として研究を行った.平成10、11年度はin Vitroにおいて、神経栄養因子GDNFの膵癌細胞に対する浸潤誘導作用を明らかにした.平成12年度は、最近新たに報告された神経栄養因子Neurturinの膵癌細胞に対する浸潤誘導作用の検討と、これら因子の細胞内シグナル伝達にも焦点を当て、膵癌の神経浸潤のメカニズムについて検討した.結果:[1]まず今回使用した神経系細胞T98Gにおいて新しい神経栄養因子Neurturinの発現をRT-PCR法で確認した.[2]In vasion assay法を用いて、Neurturinによる膵癌細胞に対する浸潤誘導作用を検討したところ、Neurturinにより有意に浸潤細胞数の増加を認めた.[3]次に膵癌細胞をNeurturinで刺激して、Retレセプターの活性化の有無をprotein tyrosine kinaseにより検討したところ、コントロールに較べ明らかにRetレセプターの活性化の亢進が確認できた.[4]膵癌細胞の浸潤に大きな役割をしているFAK(focal adhesion kinase)の活性化が、神経栄養因子GDNF、Neurturinにより有意に増加していることを確認した.まとめ:つまり神経栄養因子GDNF、Neurturinは膵癌細胞膜表面にあるRetレセプターを活性化し、その細胞内シグナルによりFAKが活性化されて、膵癌細胞の浸潤を引き起こしている可能性が示唆された.このことにより膵癌の神経好性浸潤のメカニズムの一端が明らかになったと考えられた.
すべて その他
すべて 文献書誌 (1件)