研究概要 |
進行消化器癌に対する遺伝子治療を臨床応用可能とする目的で,免疫遺伝子治療と自殺遺伝子治療を併用する基礎的研究を行い,将来の臨床応用の際に注意を払うべき問題点について検討した.同系マウスモデルを用いて大腸菌由来cytosine deaminase(CD)発現アデノウイルスベクター(AdCD)とインターロイキン2発現アデノウイルスベクター(AdmIL-2)の併用による治療効果を検討した.マウス大腸癌皮下腫瘍モデルを用いて,AdCD,AdmIL-2を腫瘍内注入した後5-fluorocytosine(5-FC)を腹腔内投与した結果,2×10^8pfuのAdCDと1×10^6pfuのAdmIL-2の併用によって治療したマウスが2×10^8pfuのAdCDの単独治療に比べて生存期間が有意に延長した(p<0.01).さらに,これらのマウスの40%で腫瘍が完全に退縮し,治療14日目に誘導した脾細胞の親株腫瘍に対する細胞傷害性Tリンパ球活性が生存率とよく相関した.Cold target competition assayでこの反応が親株腫瘍細胞特異的であることが判明した.消化器癌の遺伝子治療の臨床応用として,アデノウイルスベクターによるCD/5-FCの自殺遺伝子とIL-2を用いた免疫遺伝子の併用治療は期待できることが判明した.また,ヒトへの臨床応用に際し,併用療法におけるサイトカインの発現量の違いにより治療効果に違いが生じる可能性も示唆され,今後のさらなる検討が必要である.
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