研究概要 |
気管支鏡下気管支擦過法による肺移植拒絶反応診断の可能性について検討した.移植後急性期には虚血再灌傷害に起因すると思われる気管支上皮の脱落が観察され,動物実験で検討した移植後急性期では,本法による診断は拒絶反応以外の影響が大きく限界のあることが明かとなった. そこで移植後早期の拒絶反応診断方法として気管支粘膜血流量測定法について検討した.レーザー血流計を用いた気管支粘膜血流量測定は,これまで動物実験による拒絶反応診断に関する報告が数報あり,移植後3週間以降では拒絶反応に伴う血流減少が報告されている.移植後急性期における気管支粘膜血流の測定及び臨床応用された報告はこれまでに無かったが,当施設で実施した4例の臨床肺移植症例において,移植直後から経時的に気管支粘膜血流測定を実施して臨床所見と伴に検討した.現在まで測定を施行した症例は少ないものの,拒絶反応に伴う気管支粘膜血流量:BMBF(bronchial mucosal blood flow)の減少が観察され,これまで臨床所見のみに基づいて診断が行われてきた移植後急性期の拒絶反応診断に有用な手法と成り得ることが明かとなってきた(2000年10月,第35回日本移植学会総会,気管支粘膜血流量測定による移植後急性期の肺拒絶反応診断,松村輔二,他).気管分岐部のBMBFには片肺移植後急性期にも大きな変動は観察されず,BMBF Index(測定点と気管分岐部血流量の比)は気管支粘膜血流量の経時的な変動を観察する際,信頼できる指標となり得る.移植直後,移植肺気管支は虚血状態にあるが,拒絶反応が発生しなければ3週間程度で移植肺気管支のBMBFは気管分岐部と同程度まで回復する.移植後1週間以内では,移植肺2nd carinaにおけるBMBF値20ml/min/100g未満,移植肺2nd carinaにおけるBMBF Index値0.4未満の低下は急性拒絶反応の指標となりうる.
|