研究概要 |
同種組織移植において組織凍結保存解凍操作が同種抗原性に対しいかなる影響を与えるかについて検討した。 方法: ヒト由来気道上皮細胞株・内皮細胞株を用いた培養系において、凍結保存解凍操作が細胞表面のMHC class I,II抗原の発現度に及ぼす変化、およびinterferon-gamma刺激によるMHC抗原の発現度変化をflow cytometryおよび細胞のviabilityから検討した。気道上皮細胞株にはBEAS-2Bを使用した。BEAS-2Bをプログラムフリーザーを用いて緩徐に冷却、凍結し、-80℃にて1週間保存,その後37℃まで急速解凍したものを2つに分け培養した。一方にlnterferon-gamma(IFN)100ng/mlを加え、48時間培養した後にHLA-ABC-FITC,HLA-DR-PEにて2-color flowcytometric arlalysisを施行した。同様にコントロールとして新鮮BEAS-2BをIFN添加、非添加にて48時間培養、cytometryを施行した。内皮細胞としてヒト大伏在静脈から内皮細胞を採取、継代培養したものを用いた。気道上皮と同様にIFNに対する反応性を検討した。 結果: 気道上皮細胞の凍結保存による同種抗原発現の変化について: コントロール群では、HLA-classの発現が認められ、HLA-classIIの発現度は低かった。HLA-classIIはIFN添加培養後48時間後には有意に発現増強が認められた。これと比較して、凍結保存群では、HLA-classIの発現がコントロールと比較して有意に低かった。また、HLA-classIIの発現はIFNの刺激によっても増強しなかった。 内皮細胞の凍結保存操作による同種抗原性発現の変化について: 気道上皮細胞とは異なり、HLA-classIIの発現については、凍結保存群のほうがむしろIFNに対する反応性が増強した。
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