研究概要 |
我々はこれまで、抗癌剤であるCyclophosphamide(CP)をもちいたマウスにおける薬剤誘導性免疫寛容系について考案研究しその成果を報告してきた。この寛容系の原則は、抗原として同種脾細胞を用い経静脈投与(Day 0)後、200mg/kg(LD50)のCPをDay 2)に投与することにより抗原特異的寛容状態が誘導されるというものである。この実験系は、MHC抗原は一致しマイナー抗原のみ違う組み合わせでは皮膚移植片寛容状態とキメラ状態が誘導される(1984,Transplantation)が、MHC抗原の違う組み合わせでは一時的キメラ状態と中等度皮膚片生着延長が誘導される(1985,Transplantation)。この寛容系を大動物に応用するにあたり、Discordant異種の組み合わせにおける免疫反応性及び皮膚移植片拒絶におけるT細胞の果たす役割を解明することが必須である。その目的で、我々はDiscordant異種皮膚移植片拒絶におけるCD4+及びCD8+T細胞の役割をより明らかにするために、C57BL/6CrSLCマウスをバックグラウンドとしたCD4及びCD8ノックアウトマウスを用いて検討を行った。ヒトの皮膚をB6マウス及びCD8ノックアウトマウスに移植すると、共に移植後12日以内に拒絶された。しかしCD4ノックアウトマウスにおいてはヒトの皮膚移植片は有意に生着期間が延長した(平均19.3日、標準偏差1.6日、中央値19日)。完全に異系なC3H/He Slcマウスの皮膚移植片はCD4ノックアウトマウスにおいて14日以内に拒絶された。このことからCD4ノックアウトマウス中の非CD4+T細胞は異系移植片の拒絶能を有すると考えられる。これらのレシピエントマウスの脾細胞においてはCD4^+及びCD8^+T細胞はともにヒトの皮膚移植後10日目には活性化していた。CD4ノックアウトマウス中のCD8^+T細胞の役割をより詳細に検討するために、CD4ノックアウトマウスにヒトの皮膚移植後0日目、5日目、14日目に抗CD8抗体を投与した.抗CD8抗体の投与によりヒトの皮膚移植片は有意に生着が延長した。また、免疫組織染色で、CD4ノックアウトマウスに移植されたヒトの皮膚移植片においてマウスCD8^+T細胞の浸潤が明らかになった。これらの結果から1)discordant異種であるヒトの皮膚移植片の急性拒絶にはCD4^+T細胞が必須である。2)しかしCD8^+T細胞によってもdiscordant異種であるヒトの皮膚移植片は拒絶されうるということが解明された。今後は、さらにα-GALノックアウトマウスを用い、霊長類-豚間の移植において見られるような超急性拒絶の解明および我々の考案している薬剤誘導性免疫寛容系の応用を研究していく予定である。
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