研究課題
平成10年度、「実時間で立体視可能な超音波映像法の支援による心臓手術の精度向上に関する研究」において以下の研究成果が得られた。1. 実時間三次元超音波映像システムの開発心臓の三次元情報を実時間で得るために、3.5MHzの電子セクター型超音波探触子を高速で機械的に扇状に走査してデータを収集する新しい三次元超音波探触子を開発した。これにより三次元データの収集時間が著明に短縮し、電子走査方向と機械走査方向の角度をそれぞれ30度とした場合、200msecで心臓各部の三次元超音波信号が得られるようになった。また、実時間で画像を表示するために従来の三次元システムのように信号を一度、コンピュータのメモリ内に保存してから心臓を再構築するのではなく、得られた信号を直ちに解析、ポリュームレンダリング処理し、立体像として表示する技術(VOLモード表示)を応用した。これらの技術を組み合わせることにより、最終的に心臓の立体像を毎秒5フレームで動画として表示できるシステムの開発に成功した。2. 実時間三次元超音波映像システムの基本特性、初期臨床応用安全性、画質、臨床例における描出性について検討した。In Vitroにおける探触子の漏れ電流は基準値以内(10μA以下)であり、また、実験動物(ブタ3頭)において高い安全性が認められた。解像度は探触子の走査角度、速度に影響を受けず、従来の三次元システムと同等の画質が得られた。連続120例の初期臨床応用では95例(79%)において左室腔あるいは僧帽弁を実時間で立体視することが可能であった。今年度の研究により心臓を実時間で立体視するための超音波システムの条件が明らかになり、また、臨床例における高い安全性と描出能力が確認された。本研究の成果を基に次年度では心臓外科領域における有効性に関して研究する。
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