研究課題
基盤研究(B)
平成10年度〜11年度、「実時間で立体視可能な超音波映像法の支援による心臓手術の精度向上に関する研究」において以下の研究成果が得られた。1.実時間三次元超音波映像システムの開発平成10年度において心臓の三次元情報を実時間で得るために、3.5MHzの電子セクター型超音波探触子を高速で機械的に扇状に走査してデータを収集する新しい三次元超音波探触子を開発した。これにより三次元データの収集時間が著明に短縮し、電子走査方向と機械走査方向の角度をそれぞれ30度とした場合、200msecで心臓各部の三次元超音波信号が得られるようになった(VOLモード)。平成10年度では実時間の心臓立体像を最大で毎秒5フレームの動画として表示した。平成11年度においてシステム開発上の主な成果は、心臓立体像の動画のフレームレートを8フレームに増加させたことである。即ち、高速の画像処理のために主システムとしてアロカSSD-5500型を利用し、digital parallel processingを導入してこれを実現した。著しく動画質の向上を得た。今後毎秒16フレームまでフレーム数を増加するのは容易である。2.実時間三次元超音波映像システムの臨床応用平成10年度において新システムを使用して臨床例において基本的な性能が評価されたが、従来の三次元システムと同等の画質が得られた。連続20例の初期臨床応用では80%において左室腔あるいは僧帽弁を実時間で立体視することが可能であった。平成11年度に、実時間心臓立体像のフレーム数を毎秒8フレームに増加させ24例の臨床例で性能評価を行なった。毎秒5フレームと比較してその動画質は著しく向上した。24例の臨床例の内訳は正常例10例、僧帽弁狭窄症6例、僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症4例、僧帽弁逸脱症候群4例であった。トランスジューサの消毒の制限から、経胸壁的にのみ映像された。正常例の10例すべてにおいて左室腔あるいは僧帽弁の立体視が可能であった。僧帽弁疾患14例のうち、11例で正しく病変を立体視した。病変を描写し得なかった症例では、超音波ビームの進入が妨げられた。今後術中開胸下で本法を使用となり、心臓手術の支援が実用的に可能であることが示唆された。
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