遺伝子銃は本来、細胞壁を有するため通常の方法では遺伝子導入が困難な植物細胞に物理的に遺伝子を導入する方法として開発されたもので、金製の微細粒子に遺伝子を付着させたものを高圧のヘリウムガスで噴射して細胞に撃ち込むものである。近年、遺伝子治療への応用も踏まえて動物細胞にしかもin vivoの状態で撃ち込めるハンディタイプのものが開発されたがこれを実際の遺伝子治療に応用しようというものである。 本年度は、当初の研究計画にしたがって、まず、(1)遺伝子銃によるin vivo遺伝子導入に関する基礎データ集積をおこなった。ラットを用いて、麻酔下に開頭手術を施行し、直接、脳にLacZ発現ベクターを撃ち込み、遺伝子導入の効率、到達深度、範囲等をLacZ発現アデノウイルス注入法と比較検討した。その結果、くも膜の上から撃ち込むと発射圧500psiに上げるまでほとんどの粒子がくも膜に捕捉され、それ以上、上げると風圧のために脳に広範な挫傷をつくることが明らかになった。また、くも膜を除去すると発射圧100〜300psiの範囲では脳に挫傷をつくることなく遺伝子を撃ち込むことが可能であること、到達範囲は脳表から数mmであること、到達範囲内での遺伝子導入の効率は約90%でアデノウイルスよりやや劣る程度であること、個々の細胞での発現効率は両ベクターでプロモーターが異なるため一概に比較できないがアデノウイルスの方が6〜7倍程度高いということがわかった。今後、皮下あるいは脳内に移植した脳腫瘍組織に同様の検討を加えていく予定である。
|