研究概要 |
(1)遺伝子銃によるex vivo遺伝子導入の検討:次に、F344ラット皮下に移植生育させた9Lグリオーマ腫瘍組織を摘出して、ex vivoで遺伝子銃によりLacZ発現ベクターを導入し、再度、皮下にもどして7日間生着させ、遺伝子導入の効率を検討した。100、200、400、600psiと発射圧に応じて、遺伝子導入効率が最も高い部分で3±1.5%、5-±3.5%、7±5.1%、9±5.5%と増加した。一方、アデノウイルスを感染させた腫瘍では、MOI20、40,100とウイルス濃度に応じて、遺伝子導入効率が、5.5±3.2%、7.8±4.3%、15.9±7.8%と増加した。(2)遺伝子銃による皮下腫瘍組織へのin vivo遺伝子導入の検討:(1)と同様にして、皮下にグリオーマ細胞を移植して20日間生育させ腫瘍を形成させ、腫瘍上部の皮膚を切開して、遺伝子銃およびアデノウイルスベクターにより遺伝子導入を試みた。処理後、創部を再縫合して、7日間生育させた。遺伝子銃を用いたものでは、100、200、400、600psiと発射圧に応じて、遺伝子導入効率が最も高い部分で3.6±1.8%、5.9-±4.1%、7.2±4.1%、9.5±6.5%と増加した。一方、アデノウイルスを感染させた腫瘍では、MOI20、40、100とウイルス濃度に応じて、遺伝子導入効率が、5.8±4.1%、7.5±4.1%、13.2±7.2%と増加した。以上、遺伝子銃は、アデノウイルスに比して、導入効率が劣るという結果であったが、ウイルスより調整、取り扱いが簡易で、さらに、抗原性、毒性などウイルス固有の問題点を考慮にいれる必要がなく、腫瘍の免疫原性を変える方法等、遺伝子導入効率の大小がcriticalではないような遺伝子治療に有用であることが期待できると考えられる。
|