研究概要 |
【目的】一過性の脳虚血で海馬錐体細胞が遅発性の細胞死に至ることはよく知られている。この海馬領域において脳虚血で発現に変化をきたすmRNAをAtlas cDNA Expression Arrayを用いて検索した。【方法】砂ネズミの前脳虚血はフローセン麻酔下で両側総頚動脈を5分間遮断して作成した。砂ネズミはコントロール、再潅流6時間後と2日後の3群に分けた。海馬組織から抽出したTotal RNAからOligo(dT) cellulose columnを用いてPoly A^+ RNAを抽出した。このmRNA,α-^<32>P dATP,CDS primer mixを用いて逆転写反応を行い、ラベルされたcDNAを作成した。このラベルされたcDNAとAtlas cDNA Expression Arrayとにハイブリダイゼーションを行い、オートラジオグラフィーを行って、588個のmRNAの変動を観察した。【結果】コントロール群の海馬からは72個のmRNAが確認された。このmRNAは(1)脳虚血によって減少または消失するもの29個、(2)脳虚血によって減少し、その後回復または増加するもの11個、(3)脳虚血によって一過性に増加するもの32個に分けられた。また、脳虚血によって新たに誘導されるもの38個も観察された。新たに誘導されたmRNAはCell-cell communication, Protein turnoverに関連するものが多かった。脳虚血耐性に関与すると報告されているストレス蛋白や成長因子のmRNAも誘導された。【結論】一過性脳虚血で発現に変化をきたすmRNAをAtlas cDNA Expression Arrayを用いて検索した。 種々の視点から数多くのmRNAを一度に観察するには大変重要な研究方法であった。 各々の発現に変化をきたしたmRNAについては更なる検索を予定している。
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