研究概要 |
本研究では,虚血性神経細胞の生死における活性酸素,レドックス制御機構の関与を細胞分子生物学的に解析する。すなわち,in vitro神経培養細胞において,NOをはじめとする活性酸素によるレドックス機構,特にTRX/ADF系の関与と各種転写活性因子への制御機構を検討する。またin vivoにおいては,一過性脳虚血モデル(脳再潅流モデル),ミトコンドリア障害モデルにおけるTRX/ADFの発現,TRX/ADF transgenic mouseにおける脳虚血形成への影響,さらに脳虚血耐性モデルにおけるTRX/ADFの関与を検討する。平成10年度においては,ラット,マウス一過性脳虚血モデル(脳再潅流モデル)を中大脳動脈塞栓糸一過性閉塞法を用いて作成した。ラットミトコンドリア障害モデルは,3-nitropropionic acidの複数回腹腔内投与により作成した(Neurosci Lett 259:9-12,1999)。同研究者はすでにTRX/ADF transgenic mouseを作成済みである。ラット一過性脳虚血モデル(脳再潅流モデル)および永久閉塞モデルにおいてTRX/ADFの発現を確認した(JCereb Blood Flow Metab 18:206-214,1998;Neurosci Lett 251:25-28,1998)。またマウス局所脳虚血モデルにおいてTRX/ADFの過剰発現が脳梗塞縮小効果をもつことを証明した(Proc Natl Acad Sci USA,in press)。平成11年度以降は,ラットまたはマウスの大脳皮質からのprimary culture,またはPC-12を用いて,NMDAないしNO neurotoxicityの存在を確認し,確立した神経培養細胞において,まずNMDA receptorの解析を行い,次いでNMDA neurotoxicityまたはNO neurotoxicityを定量化する。マウスの場合,transgenic mouseの大脳皮質からも神経細胞培養を確立する予定である。
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