研究概要 |
モヤモヤ病は本邦に多くみられる疾患であり、頭蓋内内頸動脈終末部の狭窄と虚血による側副血行路の形成を特徴としている。組織学的には血管平滑筋の増殖による内膜の肥厚と軽度の細胞浸潤を認める。臨床症状としては小児と成人で異なり、小児は虚血症状で、成人は脳出血で発症する。現在、この疾患に対しては対症療法として内科的には抗血小板薬の投与がなされ、外科的には蓋頸動脈からの血流のバイパス術が行われている。しかしながらモヤモヤ病の病因はいまだ不明であり根治的な治療法は確立されていない。 モヤモヤ病の病因として後天性要因としての上気道や頸部の感染、先天性要因としての自己免疫疾患、血管平滑筋の異常、遺伝子の変異等が考えられているがいずれも仮説の域をでない。それでも家族内発症が約10%にみられ臨床遺伝学的検討からは多因子遺伝が考えられること、MRA等の検査法の発達により無症候性のモヤモヤ病兄弟例が多く見つかってきていること、兄弟、親子の発症率は遺伝的背景を持たないと仮定した場合より30から40倍高いことなどから何らかの遺伝子異常が関与している可能性がある。そこでわれわれはモヤモヤ病患者の血液バンクを確立し、手始めにHLAのDNA-typingを行った。その結果いくつかのAlleleはモヤモヤ病と相関を持っていることが分かった。モヤモヤ病の遺伝子異常を見つけだすことによりモヤモヤ病を根治させる可能性もありさらにいくつかの観点から研究を進めた。 1.モヤモヤ病患者家族発症例において連鎖解析を行った。HLAのいくつかのAlleleがモヤモヤ病との相関を示した事からHLAの存在する6番染色体の解析をおこなった。また他施設との共同研究により他の染色体に関しても連鎖解析を行った。 2.TGFβ1は血管新生に関わっており最近の研究でモヤモヤ病患者の血管平滑筋培養細胞ではその発現が亢進していることが分かった。そこでモヤモヤ病が多因子遺伝を示すという観点から、TGFAβシグナル伝達において主要な役割を果たしているTGFβ1とTGFAβ typeII受容体の遺伝子多型を解析しその関与を調べた。 3.レニン、アンギオテンシン系は血圧の調節のみならず、血管平滑筋の増殖に関わっていることが分かっている。モヤモヤ病患者の血清中レニンならびにアンギオテンシンI,アンギオテンシンIIの濃度を測定、解析をすすめた。
|