研究概要 |
当研究では、組み換えアデノウイルスベクターを用いて、難治性の悪性脳腫瘍に対する遺伝子治療法の開発を目的に基礎研究を行ってきた。細胞側受容体分子との吸着を担うファイバータンパクのC末端にリジン20個の挿入変異を導入することによって、従来の野生型アデノウイルスベクターよりも100倍も効率的にグリオーマ細胞に遺伝子導入することが可能な新規アデノウイルスベクター(Ax-F/K20)の作製に成功し(Hum.Gene Ther.,1998)、これをp53プラスp33ING1によるアポトーシス誘導治療に応用したり(Cancer Res., 1999)、腫瘍特異的な制限増幅型のベクターと組み合わせて(Cancer Res., 1999)グリオーマに高い治療効果が得られることを報告した。さらにアポト-シス関連遺伝子の高発現によるアポトーシス誘導治療法系を用いて、脳腫瘍に特徴的なアポトーシスとその耐性の分子メカニズムについて検討し、以下のような結果を得た。 1.Fas/TNF関連遺伝子を用いた遺伝子治療 a.Fas ligand/Fasは脳腫瘍に強いアポトーシスを誘導した。 b.アポトーシス遺伝子発現Advの作製法を樹立した。 c.TNFとIkBdNの併用で強いアポトーシスが誘導された。 2.Caspaseによる遺伝子治療 a.Adv-caspase-8を用いて強いアポトーシス誘導を得た。 b.caspase-8によるアポトーシスはIkBdN併用で増強された。 3. Anti-oncogeneを用いた遺伝子治療 a.p53によるアポトーシスは、p33^<ING>併用で増強された。 b.p53制限増殖型Adv-F/K20は脳腫瘍治療に著効を示した。 4. 神経におけるBcl-2 familyの役割 a.Bax高発現で細胞がアポトーシスになるかネクローシスになるかは、BaxとBcl-X_Lの発現のバランスにより決まる。b.アポトーシス抑制作用はBcl-X_Lの方がBcl-2より有効である。
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