研究概要 |
10年度に本研究代表者および研究 が行った研究内容は以下の通りである。 1. ラット主要組織適合抗原(RTl)亜領域のdonor/recipient間の相違が,血管柄付同種関節移植に及ぼす影響:異なるRTl亜領域(RTIA,B,D,E)間にて同種関節移植を行ったモデルを作製し,移植関節の生着期間について観察し,統計学的比較検討を行った。これにより,ラット同種関節移植においては,RT1 A/Dを一致させることが生着に有利であると考えられた。 2. 各組織別の免疫学的反応の相違:複合組織移植である関節移植においては,各組織毎に異なる拒絶過程を示すことが予想される。これを証明するために,経時的に移植関節の各組織を採取し,組織学的評価を行った。結果は,皮膚および筋肉が移植後早期に拒絶され,それに続き血管,腱,神経,最後に骨,軟骨が拒絶された。複合組織移植としての関節移植では,皮膚筋肉の拒絶反応を抑制することが重要と考えられた。 3. 同種関節移植におけるlow dose免疫抑制剤使用の可能性について:生命維持を目的としない同種関節移植においては,免疫抑制剤投与による副作用を極力減少させなくてはならない。そのためには,その投与量を減少させる必要がある。本年度は,lowdose(1mg/kg/day x 14 days)のFK506をRTl亜領域がすべて異なるラット移植モデルに投与し,各組織毎の免疫学的反応について調べた。結果は、皮膚の拒絶反応はlow doseのFK506投与では抑制されないが,他の組織ではその拒絶反応は有意に抑制されていた。今後は,RTl亜領域の一部が異なる移植群にもlow doseのFK506投与を行い,同種関節移植におけるlow dose免疫抑制剤使用の可能性についても明らかにしていく予定である。
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