研究概要 |
1.ヒト骨髄内骨原細胞の分化機構について ヒト腸骨より採取したヒト骨髄細胞から骨原細胞を選択的遠心分離し、継代培養後、骨芽細胞および脂肪細胞への分化誘導のためリコンビナントヒトBMP-2およびデキサメサゾンの存在下に培養し、アルカリフォスファターゼ活性、Oil red Oによる脂肪染色、PT-PCR法による脂肪細胞の分化マーカー遺伝子(PPARγ2,leptin)の発現を検討した。その結果、デキサメサゾンは、骨芽細胞系・脂肪細胞系への分化いずれにおいても重要な役割をはたしていた。特に骨原細胞のin vitroでの脂肪細胞への分化刺激に必要であり、何らかの形でPPARγ2の発現を誘導していることが示唆された。 2.ヒト骨髄内骨原細胞による骨形成 上記と同様にヒト腸骨より採取し、培養増殖させた細胞を用いた。培養細胞の骨形成細胞としての性格を調べるとともに、リコンビナントヒトBMPー2及びフィブリン糊を用いてヌードマウスに移植し、in vivoでの骨形成を検討した。ヒト骨髄由来の骨原細胞は、数回の継代培養後も骨芽細胞系細胞としての形質を維持していた。マウスへのリコンビナントヒトBMP-2との混合移植実験においてDNA-ISH法を用いた検証により明らかなヒト骨原細胞由来の骨形成を認めた。一部には、ヒト及びマウス由来の骨形成細胞が同じ骨組織の中に共存していた。加えて、軟骨形成も認めた。このことより、ヒト骨原細胞は、将来において、リコンビナントヒトBMP-2などの骨形成誘導因子と併用することで、自家骨原細胞移植という形で、骨欠損や骨減少に対する治療に有効利用することができる可能性を示した。
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